商品やサービスを広く潜在客に認知させることから始まり、購買に至るまで絞り込まれるプロセスを漏斗に見立てモデル化したものをマーケティングファネルと呼び、
図のような構成で成り立つことを綴りました(飲食店の集客力アップを目指す2 顧客のダブルファネル効果を目指す!)。
しかし、「飲食店の集客はパレートの法則で改善できる」で綴った、飲食店が販促すべき20%の顧客はこのファネルに存在する客層ではなく、
さらに発展させた「ダブルファネル」と呼ばれるプロセス中の「インフルエンスファネル」に存在し、さらに「ダブルファネル効果」を狙うことに集客のkeyを見出せることをみていきましょう。
SNS(Social Networking Service)利用の浸透に伴う、消費者から発信される「クチコミ」の影響力が高まったことを受け、
企業マーケティングは、プロモーション、マーケティングリサーチなどの領域を中心に変革が叫ばれ久しくなりますが、
この流れは飲食店の集客でもまったく同様で、飲食店の集客も「従来のやり方」から変革が進んでいると感じることが多いのではないでしょうか。
ダブルファネルの構造を理解する上で、先述したマーケティングファネルは、マスマーケティングで不特定多数の潜在客に自社ブランドを認知させ、
見込み客をダイレクトマーケティングで獲得する手法に代表される従来のプロセスで「パーチェスファネル」と呼ぶものでした。
一方、「従来のやり方」であるパーチェスファネルのプロセスをさらに深層へと進展させたプロセスモデルが「インフルエンスファネル」です。
インフルエンスファネルは、①獲得に至った新規客の満足度を高めることで「顧客」へと成長を促し、
継続的に足を運んでくれるリピーター・ファン化フェーズ、②さらに単価の高い商品を購入してもらえる、
または、別の商品もしくはセットで購入してもらえるにまで発展する、アップセル・クロスセルフェーズ、③顧客が自発的に好評を発信・拡散に
至るインフルエンエンサーフェーズで構成され、漏斗を逆さにしたプロセスモデルで表現されます。
パーチェスファネルは従来の手法ですが、新世代のインフルエンスファネルの登場により否定されるものではなく、
この2つのファネルを重ね形成される概念が「ダブルファネル」なのです(図参照)。
■飲食店の集客効率を最適化するダブルファネル効果
ダブルファネルの構造がざっくりとでも理解できれば、集客の狙い目は自ずと見えてくるはずです。
ダブルファネルは「インフルエンサー」の影響力の高まりによってもたらされた変容のプロセスであるとともに、
パレートの法則で綴った、飲食店が販促すべき対象である20%の顧客は、まさにこの深層部のインフルエンスファネルに存在します。
この20%の顧客に対し望む「ダブルファネル効果」とは、①その飲食店から顧客に提供されたQHCAにより生まれる顧客育成効果(アップセル・クロスセル)及び、
②顧客(インフルエンサー)の情報拡散力により生まれる潜在顧客の集客効果(クチコミ力)のシナジー効果のことであり、
客が客を呼ぶならぬ、顧客が潜在顧客を呼ぶ集客手法なのです。
潜在客から顧客に成ったお客様は、既に複数回来店してくださっているわけですから、
あらためて不特定多数の潜在客を新規客に育成するような集客コストを投入しかき集め続ける投資の必要はありません。
また、既存顧客が推薦する潜在客は、潜在顧客であるといえ、パーチェスファネルの育成プロセスを経ることなく顧客に成っていただける可能性がありますので、
集客効率が極めて高いことは言うまでもないでしょう。
集客効率を最適化する手段とは、ダブルファネル効果が創出されるよう、インフルエンスファネルへ80%の集客コストを投下することにこそあるのです。
具体的施策は別の機会に綴るとして、集客に悩む飲食店のコンサルに携わると、どのように「新規客」を集客すればいいのか、
「新規客」を集客するために大手クチコミサイトへ高額な掲載依頼料を支払っているなど、「新規客の集客」に腐心されがちです。
確かに新規客の集客は一時的な売上アップに繋がるので、集客の成果が目に見え易く、集客予測も容易です。
「集客に成功した」「売上アップした」と捉えやすいのは概ね新規客増です。
しかし、一方で新規集客は広範へのアプローチが求められる為、最もコスト負担が発生するところでもあります。
ですので、永遠に新規集客を続けるとなると自転車操業に陥り、やがて商圏内に際限がある見込み顧客が果てると共にコストに見合う集客ができなくなり、行き詰まるのです。
そもそも一度来店してくださったお客様への満足度アップに向け、自店のQHCA向上に努めることは当然なのですが、意外とこの観点が抜け落ちている経営者は多いように感じます。
集客に悩んだ時こそ、短期的な獲得率向上を目指すのではなく、ダブルファネル効果を有効に活用できるよう、
パーチェスファネルからインフルエンスファネル深層までの一連のプロセスにおける戦略の立案と、店舗パフォーマンス(QHCA)の底上げ、
つまり、顧客満足度の向上に80%の集客コストを注ぎ集客を目指すべきでしょう。